雑貨屋を出て、アーケードを歩いている。
赤い袋と金のリボンでラッピングしてもらった羊の貯金箱に、きりちゃんはご満悦のようだ。
私としてはプレゼントの内容に若干不安が残るけれど、金の豚よりはいいはずだ。そもそも、贈る相手が決まっていないクリスマスプレゼントなんて、闇鍋のようなものか。
と、考えてひとり頷く。
「名無しさんさん」
「ん?」
きりちゃんが、きらきらした目で私を見上げている。
「本当に、ありがとうございました」
「どういたしまして。喜んでもらえるといいね」
はい、と可愛らしい返事に被せるように、後ろから呼ぶ声がした。
「きり丸」
私ときりちゃんは同時に振り向いた。
「あ、食満先輩」
「また会ったね」
笑いかけると、食満君は会釈する。
「どうも」
「伊作君は?」
「先に帰りました。名無しさんさんたちも、買い物終わりましたか? もしそうなら、きり丸を連れて帰ろうと思って声を掛けたんですが……」
食満君は、はきはきとした口調で言いながら、ほんの僅かにはにかんだような笑顔を浮かべる。それが、いかにも好青年といった感じだった。
「そうなんだ……ありがとう。車で送っていこうと思ってたから、食満君も一緒に乗って」
「いえ、バスでいいです。な?」
食満君の短い問いかけに、きりちゃんは頷いた。
「はい。名無しさんさん、ぼく、食満先輩と帰ります。名無しさんさんは会社に戻ってください」
「うん……じゃあ、食満君、きりちゃんをお願いします」
「はい。任せてください」
食満君は頼もしく言った。
バス停へ向かう二人と別れて、私は駅ビルへの近道に向かった。
一度だけ振り向くと、きりちゃんが黒いマフラーを揺らして角を曲がっていくのが見えた。
クリスマスソングの流れるアーケードを後にして、少しほっとした。
この時期の街をひとりで歩いていても泣かない程度に、記憶は薄れた。けれども、油断するとまだ泣きそうになる。
どうしてこんなにも忘れられないのだろう。もうこれっぽっちも、あの男を好きではないのに。
吐いた溜息は白く流れた。
半助君のことを考えて、クリスマスのことを考える。そしてまた半助君のことを考える、という不毛なサイクルだ。
オフィスビルの建ち並ぶ通りを真っ直ぐに進むと、駅はすぐそこだ。
緩やかな坂を早い歩調で下っていくと、煩わしいことは全て、頭から追い出せそうだった。