今日は仕事を休んだ。
ずる休みか、否かが微妙なところだ。
でも、見た目は自分だけど中身は土井さんだ。仕事になんかなるはずがない。
「忍者なんです」
言わないとは思うけど、会社でうっかりそう口走ったらまずい。まずすぎる。
苗字の頭がおかしくなった、なんて思われて、病院に連れて行かれるのがおちだ。
でもいつ元に戻れるか分からないのだから、土井さんには最低限のことを覚えてもらうしかない。そうでないと、ふたりとも路頭に迷う。
会社の人の名前、写真はないけど外見の特徴を教えると、土井さんはすんなり覚えてしまったみたいだった。
さすが忍者。
昨日あれから話を聞くと、どうやら彼は本物の忍者のようだった。正直、私には偽物と本物の区別なんてつかないけれど。
当然ながら土井さんはパソコンを見るのは初めてなので、不安になりながらも、基本的な使い方と仕事で使うものを教えてみた。パソコン初心者には厳しいかと思いきや、これが意外に飲み込みが早い。
「こうですか?」
「そうです! 土井さん、すごーい! パソコン覚えるの早いですね。忍者ってハイテクにも強いんですね!」
まだまだ覚えてもらうことはあるので、よいしょしとく。
「ってか土井さん、頭いいんですね」
「理解し切れてはいないと思うんですが……名無しさんさんの教え方が分かりやすいので」
「わー、嬉しい。ありがとうございます。パソコンなんて使っているうちに覚えますから! 土井さんなら大丈夫ですよ! 最悪、隣の席の人に訊いて凌いでください」
「はい」
「明後日は土曜で仕事が休みなので、明日だけ頑張ってくださいね! ちょっと休憩しましょう」
お茶を用意して、コンビニで買ったプリンとエクレアを食べる。
土井さんをコンビニに連れていった時は凄かった。眼球が落ちるんじゃないかってくらいに、目を見開いて驚いていたっけ。
くすり、と思い出し笑いをすると、土井さんが私を見た。
やましいことを考えていた分けではない、という意味を込めて首を横に振る。
「あ、そうだ……あの……日曜に、同窓会があるんです」
「同窓会?」
もぐもぐとプリンを頬張りながら、土井さんが聞き返した。
「学生時代のクラスメイト達と会うんです」
「そうなんですか……必要なら行きますよ」
そう言ってくれると思った。土井さん優しい。
1日一緒に過ごしてみると、彼は変態ではなさそうだった。そう、ただの忍者で先生。
にこにこしていて、優しくて、頭もいいみたいだ。もちろん、顔も。これはもてるんじゃないかなぁ。
そんな人をこき使っていいんだろうか。でも、非常事態だし。
「じゃあ、同級生の顔も覚えてくださいね」
本棚から取り出した卒業アルバムを渡すと、土井さんは困ったように笑った。