半助君と初めて会ったのが3年前のクリスマス。それから2年間は友達だった。
お茶をして、ご飯を食べて、映画を観て、飲みに行って。ある日ふと気付いたら、私たちの間に流れる空気は友達と言い切るには微妙すぎるものだった。
でも今更、告白なんてできない。そう思った。何より私は傷付きたくなかった。
あの惨めなクリスマスを思い出すと、告白なんて絶対にしたくなかった。
第一、半助君はあの日の出来事を知っているのだから、私のような馬鹿な女を好きになるはずがない。だから友達で十分だ。
それが一番なんだと自分に言い聞かせていた。
けれども、今年の初詣の帰り道で、半助君が私たちの関係を変えた。
「色々考えたのだけれど、やっぱり、はっきりさせた方がいいと思うんだ」
見上げた横顔は強ばっていたので、続くのはいい話ではなさそうだった。
もしかして、彼女ができたのかな。
そう考えると胸が痛んだけれど、行動を起こさなかったのだから仕方のないことだ。
せめて友達でいたいとごねるのは、迷惑になるだけだ。何を言われても、ただ受け入れよう。
そう決意したのに、半助君の言葉は私の予想とは違った。
「私と、付き合ってほしい」
私は心底驚いて、足を止めた。
「……何で?」
「何でって……名無しさんのことが好きだからだ……」
もしかして、と半助君は弱々しく言った。
「名無しさんは、違うのか?」
どう答えるべきか迷っていた。
好きな人に告白されて嬉しくて仕方がないのに、「また騙されるのかもしれない」と、心のどこかで思っていたからだ。
半助君がそんな男ではないということは、分かっていたけれど、まだどこか信じきれなかった。
無防備に差し出した気持ちを、踏みにじられるかもしれない。そう考えると、素直に好きだと伝えられなかった。
だから、返事を待ってもらった。
何日かかけて、抱えている気持ちを全て話した後、私たちはようやく恋人になることが出来た。
「私きっと、面倒くさい女だよ」
試すようにそう言うと、半助君は困ったように笑った。
「名無しさんが手の掛かる人だってことは、最初の朝に分かっていたよ」
その言葉で、冷たい缶コーヒーの味を思い出した。
苦くて優しい、いびつなクリスマスの朝。
私は今も、半助君を恋人として信じ切れていない。彼はそれでもいいと言う。時間が経てばきっと変わる、と。
私もそれを信じたい。
幸せなクリスマスを過ごせれば、何か変わるような気がしている。こんな不安はきっと、跡形もなく消えてしまう。
正直に考えを打ち明ければ、半助君はクリスマスを一緒に過ごしてくれると思う。
でもそこまでの価値が、私にあるのだろうか。
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