「さて、きりちゃん。どこに行く? 何か食べる?」
「何か食べるって……名無しさんさん、仕事中でしょーが。いいんすか、そんなに長い時間サボって」
「よくはないけど……だめだけど。今日だけだよ、今日だけ! もうすぐクリスマスだし!」
「なんすか、それ」
きりちゃんが笑うので、私もつられて笑う。
ふと、周りの景色が目に入った。クリスマスとお正月を控えた街は、なんだか不思議な雰囲気だ。
「お腹いっぱい?」
「そういうわけじゃ……ないっすけど」
「じゃ、鯛焼き食べようよ。いいよね? 鯛焼きで」
ぱっ、ときりちゃんの手を掴んで、鯛焼き屋の前に引っ張っていった。振り払われるかと思ったけれど、案外素直についてくる。
「二つくださーい」
焼きたての鯛焼きを頬張りながら、アーケードを歩く。
「美味しいね」
「はい」
「デートって感じだね」
「名無しさんさん、捕まりますよ」
きりちゃんの言葉に笑いながら、鯛焼きをかじる。
隣を歩く少年は遠慮していた割に、食べるのが早い。さすがは育ち盛りだ。
「どこか、見たいお店ある?」
「何を買うか、まだ決めてないんすよねー」
「そっか。雑貨屋さんでも覗いてみる?」
うーん、と思案顔できりちゃんは唸る。
女の子ならともかく、小学生男子のプレゼントは何がいいのか分からない。少しはリサーチしてくるんだったかな。
「渡す相手が決まってるわけじゃないんだよね?」
「誰に当たるか、プレゼント交換の時まで分からないんですよー」
「難しいね、プレゼント……きりちゃんだったら、何が欲しい?」
「金っすね」
訊くだけ無駄だった。
私は苦笑しながら、空になった鯛焼きの袋をきりちゃんの手から取り上げると、自分の分と一緒に丸めてコートのポケットに入れた。
「何がいいんだろうねぇ、プレゼント。500円かぁ」
「高いっすよね」
「う、うーん……小学生のお小遣いからだと大変だよね」
「そうなんすよ。あ! 名無しさんさんは、土井先生へのプレゼント何にしたんですか?」
「……まだ買ってないよ」
なんだ、とつまらなそうに、きりちゃんは言った。
一方、私の心臓は、突然の質問にバクバクいっている。
半助君に何をプレゼントするかなんて、全く決まっていない。それ以前に、プレゼントを贈るかどうかで迷っている。
3年前と同じ失敗はしたくない
喜んで欲しいという気持ちと、半助君に裏切られたらという気持ちがせめぎ合って、今のところは後者が勝っている。クリスマスイブには会えないようだし、余計にだ。
まともな柄の下着でも買って渡そうか。クリスマスにそれは、さすがに酷いかな。
笑いを噛み殺しているのを悟られないように、きりちゃんから顔を逸らすと書店が目に入った。