買い物5

 雑貨屋を出て、アーケードを歩いている。
 赤い袋と金のリボンでラッピングしてもらった羊の貯金箱に、きりちゃんはご満悦のようだ。
 私としてはプレゼントの内容に若干不安が残るけれど、金の豚よりはいいはずだ。そもそも、贈る相手が決まっていないクリスマスプレゼントなんて、闇鍋のようなものか。
 と、考えてひとり頷く。

「名無しさんさん」
「ん?」

 きりちゃんが、きらきらした目で私を見上げている。

「本当に、ありがとうございました」
「どういたしまして。喜んでもらえるといいね」

 はい、と可愛らしい返事に被せるように、後ろから呼ぶ声がした。

「きり丸」

 私ときりちゃんは同時に振り向いた。

「あ、食満先輩」
「また会ったね」

 笑いかけると、食満君は会釈する。

「どうも」
「伊作君は?」
「先に帰りました。名無しさんさんたちも、買い物終わりましたか? もしそうなら、きり丸を連れて帰ろうと思って声を掛けたんですが……」

 食満君は、はきはきとした口調で言いながら、ほんの僅かにはにかんだような笑顔を浮かべる。それが、いかにも好青年といった感じだった。

「そうなんだ……ありがとう。車で送っていこうと思ってたから、食満君も一緒に乗って」
「いえ、バスでいいです。な?」

 食満君の短い問いかけに、きりちゃんは頷いた。

「はい。名無しさんさん、ぼく、食満先輩と帰ります。名無しさんさんは会社に戻ってください」
「うん……じゃあ、食満君、きりちゃんをお願いします」
「はい。任せてください」

 食満君は頼もしく言った。

 バス停へ向かう二人と別れて、私は駅ビルへの近道に向かった。
 一度だけ振り向くと、きりちゃんが黒いマフラーを揺らして角を曲がっていくのが見えた。

 クリスマスソングの流れるアーケードを後にして、少しほっとした。
 この時期の街をひとりで歩いていても泣かない程度に、記憶は薄れた。けれども、油断するとまだ泣きそうになる。
 どうしてこんなにも忘れられないのだろう。もうこれっぽっちも、あの男を好きではないのに。
 吐いた溜息は白く流れた。
 半助君のことを考えて、クリスマスのことを考える。そしてまた半助君のことを考える、という不毛なサイクルだ。
 オフィスビルの建ち並ぶ通りを真っ直ぐに進むと、駅はすぐそこだ。
 緩やかな坂を早い歩調で下っていくと、煩わしいことは全て、頭から追い出せそうだった。

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