駅もすっかりクリスマス仕様だ。
広場にはツリーが飾られて、この時期には待ち合わせの目印になっている。
私にとっては、忌々しいことこのうえない。
「いけいけどんどーん!」
足を止めて、声のした方に目をやった。
見覚えのある少年が、巨大な袋を二つ持ち、植え込みを突っ切って進んでくる。
どこを通っているんだ。と思ったのも束の間、七松君は私のすぐ側に迫っていた。
足の速さに感心していると、彼と目が合った。
「おっ、名無しさんさん!」
「七松君……こんにちは」
「買い物ですか?」
「ここの駐車場に車を停めてて」
ふと、七松君の荷物に目がいった。ひとつはビニール袋で、もうひとつは紙袋だ。
「あの、七松君……紙袋に穴開いてるけど、大丈夫?」
「ん? ああ、本当だ」
「何を買ったの?」
「バレーボールです。あと駄菓子」
彼の扱い方だと駄菓子は粉になっているんじゃないだろうか、と一瞬考えてしまった。でもそんなのは余計なお世話だろう。
それよりも、紙袋の10センチほどの穴は、彼が帰るまでにまだまだ広がりそうな雰囲気だ。
「袋あげようか? 車に大きいのがあるよ」
「いや、ボールはそのままでも持てるから大丈夫です。名無しさんさんの荷物、持ちましょうか?」
返事をする前に、七松君は私の荷物を手に取った。荷物と言っても鞄と小さな紙袋だけだ。
「な、七松君っ……待って」
駅ビルの中に入り、エレベーターの方へ向かう七松君を必死に追う。荷物を持ったままで、それなりの数の買い物客を避けているというのに、ものすごい早さだ。
タイミングよく降りてきたエレベーターに颯爽と乗り込んだ七松君は、ドアを開けて私を待っていてくれるわけでもない。
「わっ……」
ドアが閉まる寸前に、どうにか滑り込んだ。
七松君はマイペースすぎる。肩で息をする私など全く気にせずに、七松君は首を傾げた。
「あれ? 何階だ?」
「……4階」
4階のボタンを押して、私は大きく溜息を吐いた。